日記の「書き方」で、気持ちの切り替え上手は伸びるのか?

重回帰分析を、手を動かしながら学ぶための教材です。3週間日記を書いた大学生 160 人のデータ(架空)を使います。ダミーデータ

今日の問い 日記でどんな言葉を多く使った人ほど、感情調整のスタイルが変化したのか?

感情調整は ERQ(Emotion Regulation Questionnaire)という質問紙で、日記を書く前(事前)と後(事後)に測りました。ERQ には2つの下位尺度があります。認知的再評価は「ものの見方を変えて気持ちを落ち着かせる」、表出抑制は「気持ちを顔や態度に出さないようにする」傾向です(どちらも 1〜7 点)。

分析する変化:
すべてのステップに反映されます
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データを見てみよう何を測って、何を予測したいのか

日記の文章をコンピュータで単語に分け、特定のグループの言葉がどれくらいの割合で出てきたか(%)を数えました。これが説明変数(原因の候補)です。

私は発表で失敗して落ち込んでいた。でも書いているうちに、準備が足りなかったからだと気づいた。次は大丈夫だと思えてほっとした。

認知処理語(理由・気づき) ポジティブ感情語 ネガティブ感情語 一人称(私・自分) ※例文は説明用の創作

予測したいのは ERQ の 変化量 = 事後 − 事前 です。これが目的変数です。プラスなら「日記の後にその傾向が強くなった」ことを表します。

データの最初の8人

ステップ6のPythonコードでそのまま使えます

事前と事後の平均

変化量の分布

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1つずつ関係を調べる(単回帰)授業で学んだ散布図・相関係数・回帰直線の復習

まずは説明変数を1つだけ選び、変化量との関係を散布図と回帰直線で見てみましょう。

4つの言葉と変化量の相関係数 r

ここがポイント:単回帰では「その言葉だけ」に注目します。でも、ポジティブな言葉を多く書く人はネガティブな言葉が少ない…というように、説明変数どうしも関係しています。すると、1つずつ見た関係には他の変数の影響が混ざってしまうのです。そこで次のステップへ。
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まとめて調べる(重回帰)他の変数をそろえたときの「その変数だけの効果」を見る

重回帰分析では、複数の説明変数を同時にモデルに入れます。モデルに入れる変数を選んでみましょう。

発展:事前得点をモデルに入れる

最初から得点が高い人は伸びる余地が小さく、低い人は大きく伸びやすい(平均への回帰)。変化量を分析するときは、事前得点をそろえて比べるのが一般的です。オンにすると他の係数がどう変わるか確かめてください。

「効果あり」は p < .05(5%水準で有意)を目安にした判定です。

単回帰(相関 r)と重回帰(標準化係数 β)を比べる

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予測してみようステップ3の回帰式に数値を入れる

スライダーで「ある学生の日記」の特徴を決めると、回帰式から変化量を予測します。最初は全員の平均の値にしてあります。

予測される変化量
0.00
−1.0(低下)0+1.0(上昇)

予測はあくまで平均的な傾向です。R² が 1 より小さいぶん、実際の人は予測から外れます。また、データの範囲外(極端な値)での予測は信頼できません。

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確認クイズ選ぶとすぐに解説が出ます

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用語集とPythonコードレポートを書くときの参考に

回帰係数 B(非標準化係数)

説明変数が 1 単位(ここでは 1%)増えたとき、目的変数がどれだけ変わるかを表す値。単位がそろっていないので、変数どうしの大きさ比べには使えません。

標準化係数 β(ベータ)

すべての変数を平均0・標準偏差1にそろえてから求めた係数。「1標準偏差増えると何標準偏差変わるか」を表し、変数どうしで大きさを比べられます。単回帰では β は相関係数 r と一致します。

偏回帰係数

重回帰分析の係数のこと。「他の説明変数の値を一定にしたときの」効果を表す、という意味で“偏”がつきます。

p値

「本当は効果が0だとしたら、今回くらい大きな係数が偶然出る確率」。p < .05 なら「効果が0とは考えにくい」と判断します。p が大きいときは「効果がない」と証明されたのではなく、「あるとは言えない」だけです。重回帰の係数の検定には t 分布、モデル全体の検定には F 分布を使います。

決定係数 R² と 調整済み R²

目的変数のばらつきのうち、モデルで説明できた割合(0〜1)。変数を増やすと R² は必ず増えるので、変数の数を考慮して割り引いたのが調整済み R² です。

多重共線性

説明変数どうしの相関が非常に強いと、係数が不安定になり解釈が難しくなる現象。VIF(分散拡大係数)が 5〜10 を超えると要注意です(このデータでは約 1.1〜1.4 で問題なし)。

Pythonで同じ分析をするコード

 

ステップ1のボタンでダウンロードした erq_dummy_data.csv と、フォントファイル NotoSansJP-Regular.ttf / NotoSansJP-Bold.ttf を、このコードと同じフォルダに置いて実行します。statsmodels がない場合は pip install statsmodels。

この分析の限界

「認知処理語を多く書いた人ほど再評価が伸びた」は相関関係であり、「そう書けば伸びる」という因果関係ではありません。因果を確かめるには、書き方を指示するグループとしないグループをランダムに分ける実験が必要です。また、4つの変数を同時に検定しているため、偶然「効果あり」が出る可能性にも注意が必要です。